「岸優太さんは主演でこんなにも輝けるのか」映画評論家が選ぶ、2023年男性アイドルベスト3

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 歌やダンスだけでなく、“演技”の才能を開花させる男性アイドル/ボーイズグループのメンバーは少なくない。2023年公開の映画にも数多くのメンバーが出演したが、その中でも特に存在感を発揮し、輝いていたのは誰なのか? 今回、映画評論家・モルモット吉田氏に、その人物を作品タイトルとともにベスト3形式で紹介してもらった。
第3位:GENERATIONS from EXILE TRIBE
『ミンナのウタ』
【監督】清水崇
【キャスト】GENERATIONS from EXILE TRIBE(主演)、早見あかり、マキタスポーツほか
【公開日】2023年8月11日
【あらすじ】人気ラジオパーソナリティであるGENERATIONSの小森隼は、局の倉庫で30年前に届いたカセットテープを見つける。その日の収録で不穏な音声を聞いた隼は、ライブを控える中、忽然と姿を消してしまう。マネジャーから捜索を依頼された探偵はメンバーへの聞き取り調査を開始するが……。
GENERATIONSメンバーの“キャラクター”をうまく見せた秀作
 『ミンナのウタ』はGENERATIONSのメンバーが本人役で出演しているホラー作品。男性アイドル/ボーイズグループが本人役を演じる映画というと、過去には、光GENJIの『ふ・し・ぎ・なBABY』(1988年)などがありますが、最近では珍しいパターンといえます。
 本作は、この「メンバーが本人役を演じている」という点とホラーがうまく融合していると感じました。というのも、本人が本人役を演じる場合、キャラクターに色をつけられないなどの理由から、薄っぺらい描写に陥りがち。しかし、同作はホラーという枠を上手に使い、人間ドラマ的なところを描かなくて済んでいることもあってか、各メンバーのことをあまりよく知らない私でも、「彼らのキャラクターをうまく見せている」と感じる出来になっていたんです。その点でGENERATIONSが存在感を発揮できた作品だったといえます。
 ちなみに本作は、“声”をベースにしたホラー作品。ラジオの収録現場や音楽のレコーディング、ライブシーンなど、彼らの仕事の中で“声”の恐怖が描かれるのも、本人が本人役を演じるというつくりにマッチしていて、ホラー映画として非常に出来のいい、面白い作品でした。
第2位:WEST.・重岡大毅
『禁じられた遊び』
【監督】中田秀夫
【キャスト】橋本環奈、重岡大毅(ダブル主演)、堀田真由、正垣湊都、長谷川忍(シソンヌ)、ファーストサマーウイカほか
【公開日】2023年9月8日
【あらすじ】映像ディレクター・倉沢比呂子(橋本環奈)は、元同僚である伊原直人(重岡大毅)の家を訪れた際、彼の息子・春翔(正垣湊都)が、庭の盛り土に向かって「エロイムエッサイム」と呪文を唱え続ける姿を目撃。春翔は事故により帰らぬ人となった母・美雪(ファーストサマーウイカ)を蘇らせようとしていた。その後、倉沢と伊原の周囲では怪異が続発するようになる。
ホラー映画で“受け身”の芝居が光ったWEST.・重岡大毅
 『禁じられた遊び』は、“笑いと恐怖が紙一重”というつくりになっている一風変わったホラー作品。ファーストサマーウイカさん演じる強い猜疑心を持つ美雪、シソンヌ・長谷川忍さんの怪演が光るうさんくさい霊能者など、極端で過剰な人物たちが登場するのですが、そんな彼らをひたすらに受け止めるのが、重岡大毅さん演じる伊原直人。彼は“一番まともで普通の人”だったものの、さまざまな恐怖に見舞われるうち、狂気に達するというキャラクターでした。
 つまり直人は劇中、被虐的な役割を担っていたわけですが、重岡さんの“受け身”の芝居がとてもよかった。また、直人は観客の目線に立つキャラクターともいえ、そこが崩れると映画自体が崩れてしまう可能性もある中、重岡さんはそのあたり、非常にうまく演じていたと思います。
 重岡さんはSTARTO所属タレントの中でも、演技面では突出していると感じます。私はドラマのほうは追っていないので、重岡さんの演技を16年公開の『溺れるナイフ』以来、約7年ぶりに見たのですが、「俳優としてこんなに広がりのある人になったのだな」という印象を受けました。
第1位:Number_i・岸優太
『Gメン』
※公開当時は旧ジャニーズ事務所(現・STARTO ENTERTAINMENT)所属
【監督】瑠東東一郎
【キャスト】岸優太(主演)、竜星涼、恒松祐里、矢本悠馬、森本慎太郎(SixTONES)、田中圭ほか
【公開日】2023年8月25日
【あらすじ】入学すれば必ず彼女ができるという私立武華男子高校に、彼女欲しさに転校してきた高校1年生の門松勝太(岸優太)。しかし、彼が振り分けられたのは、問題児ばかりが集う「最底辺」クラスの1年G組だった。勝太はクセの強いクラスメイトたちにあぜんとしながらも、恋に友情にと楽しい日々を過ごすが……!?
岸優太は逸材――ひたすら彼を愛でているような気持ちに
 『Gメン』は、ボンクラの高校生がヤンキークラスに転校してきて、ケンカに明け暮れる……という王道のヤンキーもの。岸優太さんは本作が映画初主演とのことですが、ひたむきさと愛嬌のあるお芝居で、鑑賞中、ひたすら彼を愛でているような気持ちになりました。
 助演で出ていた映画では、正直、岸さんは印象に残っていなかったのですが、主演だとこんなに輝ける人なのか……と。彼は逸材です。なぜこれまで主演映画が作られていなかったのか、本当にもったいないと思います。
 ちなみに、岸さんは20代後半で高校生役を演じています。本作は、ほかのキャストも高校生を演じるにはかなり年が上だったり、ムチャなくらい年齢層がバラバラだったりしたのですが、それにより各々のキャラクターの違いが出ていてよかった。役と同じ年齢の若手俳優で演じると、キャラクターだけでなくお芝居も画一的になりがちですからね。
 岸さんは『Gメン』公開後に事務所を退所しましたが、俳優として……というか、主演俳優としての期待度が上がりました。ぜひ映画でも活躍してほしいです。
旧ジャニーズ退所組・岡田准一、二宮和也の“脇役”に期待
 今年、旧ジャニーズ事務所所属タレントの退所が相次ぎました。これまで主演前提で映画に出ていた、岡田准一さんや二宮和也さんら演技の質が高い人たちが、独立により脇役を演じるようになるかもしれず、とても期待しています。
 岡田さんは今年、原田眞人監督の『BAD LANDS バッド・ランズ』に友情出演し、ワンシーンだけ登場しましたが、その時の存在感は目を見張るものがあった。一方、二宮さんは主演映画『アナログ』(監督・タカハタ秀太)での演技のバランスの良さを見ていると、年齢的にも、主演しかしないのはもったいないと感じていました。
 旧ジャニーズ所属時代は、内容がハードすぎて出られなかったという作品にも出演するようになるかもしれませんし、独立組の俳優業に注目していきたいですね。
モルモット吉田(もるもっと・よしだ)
映画評論家。著書に『映画監督 大島渚の戦い 「戦場のメリークリスマス」への軌跡』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『映画評論・入門!』(洋泉社)、共著に『映画「東京オリンピック」1964』(復刊ドットコム)などがある。
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