上野千鶴子が文春砲に反論――“結婚の面倒くささ”を考えさせられる「婦人公論」

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 「婦人公論」4月号(中央公論新社)が発売になっています。特集は「やめてスッキリ、幸せになる」。夫と同じ空間で暮らすことをやめた奈美悦子のインタビュー、夫に合わせることをやめた読者の手記、結婚制度に異議を唱え続けていながら結婚報道があった上野千鶴子の「文春砲への反論」などが並び、通して読んでいくと、読者が最もやめてスッキリしたいのは“妻”なのではという感想が浮かんでくる内容になっています。
 なぜこんなに窮屈な思いをしながら人は結婚をするのか……という点まで考えさせられる今号の中身、さっそく見ていきましょう!
<トピックス>
◎奈美悦子 “家庭内別居”で無駄なストレスなし
◎読者体験手記 夫に合わせるのをやめました
◎上野千鶴子 緊急寄稿「文春砲」なるものへの反論 15時間の花嫁
奈美悦子の“家庭内別居”事情
 特集「やめてスッキリ、幸せになる」内では、読者アンケート「〇〇を手放したら肩の荷が下りた」が公開されています。“最近やめたものランキング”に「1位 年賀状」「2位 セール品の購入」「3位 衣服」「4位 お中元・お歳暮」と並ぶ中、目を引いたのが「5位 夫婦一緒の寝室」でした。夫と同じ空間で寝ることにストレスを感じている読者が多くいるようです。
 女優・奈美悦子もインタビュー「“家庭内別居”で無駄なストレスなし」で、夫と別の寝室を選択してうまくいっていると語っています。56歳のときに再々婚をし、現在は3人目の夫と16年目となった奈美。円満の秘訣は、結婚当初からの“家庭内別居”だそう。
 「寝室が別なだけではなく、日中も私は2階、彼は3階で主に過ごす。3階にはお手洗いやお風呂もついているし、ミニキッチンもあるので、内階段でつながっているとはいえ、マンションの別々の部屋で暮らしているようなものです」とのこと。広い家を建てられる経済力があればこそで、うらやましい限りです。
 もともとは70歳になったらベッドルームを一緒にしようと話していたとのこと。「お互いに朝起きて亡くなっていたら嫌だから」という理由だそうですが、72歳になった現在も結局は別々のまま。旅行で一緒の部屋で寝たとき、夫が枕元のライトを点けて本を読みだしたことにストレスを感じ、一方、夫からは朝「いびきがすごかった。前はいびきなんかかかなかったのに、立派なおばあちゃんだね」と言われ、「寝室を一緒にするなんてありえない」と痛感したと話しています。
 また、夫は多趣味で外にたくさん友人がいるほか、自室の掃除をするし、奈美が病気をしたときに料理もするようになったそう。広い家を持とうと思えば持てる経済力と、余計なケアの必要がない自立したパートナーを選ぶ目。それが、ストレスのない結婚生活を送るために必要なことなのだと思わされました。
夫の不倫相手は「熊のよう」……なぜ離婚しないのか!?
 続いて見ていくのは読者体験手記のコーナー。テーマは「夫に合わせるのをやめました」で、特集とも共通した内容になっています。
 特に気になったのは、1通目の76歳女性の投稿です。夫の定年祝いの日、夫の浮気に気づいてしまったとのこと。版画家・ヤマダユウコなる人物が夫の浮気相手で、彼女は自宅にもやって来たそうです。「日焼けした顔に艶のない髪」「冬眠前の熊のような太めの女性」「締まりのない声」という描写に、憎々しさが滲んでいます。そんなヤマダユウコとの関係を夫に問いただし、不倫を認めさせ、「心的外傷後ストレス障害」と診断されるまで苦しんだ投稿主ですが、なぜか離婚はせず、家庭内別居を選びます。
 誓約書には「運悪く廊下で鉢合わせした場合、即刻どちらかが自室に戻り出直す」という項目もあるそう。もう離婚したほうが投稿主も悠々自適に過ごせるし、夫もヤマダユウコと自由にできるのでは……と思いますが、離婚を選ばない理由は書かれていませんでした。ヤマダユウコに夢中の夫のほうも、離婚までは望んでいないようです。こうなってまでも続けたい「結婚」とは一体なんなのだろうと考えさせられます。
 2通目では、夫と寝室を別にした女性が登場。体調も回復し、セックスレスも解消したそうです。奈美しかり、夫婦は別に眠るべきなのかもしれません。

 最後に見ていくのは、ジェンダー研究のパイオニア的存在である社会学者・上野千鶴子の緊急寄稿「『文春砲』なるものへの反論 15時間の花嫁」です。著書『おひとりさまの老後』(文春文庫)などで知られ、かねてから結婚制度に異議を唱えていた上野氏ですが、2月22日発売の「週刊文春」で「おひとりさまの教祖 上野千鶴子が入籍していた」として、2021年に亡くなった歴史学者・色川大吉氏さんと結婚していたことを報じられました。
 上野氏はこの報道に「他人のプライバシーを嗅ぎまわってそれをネタにする卑しい人々がいる」「不愉快でならない」とご立腹で、今回の緊急寄稿に至ったようです。上野氏は死期が迫っていた色川さんの介護をして看取ったこと、色川さんの死の直前に婚姻届を提出したことは認めたうえで、婚姻届提出の15時間後に色川さんが亡くなったことを明かし、「正味15時間の婚姻関係」だったとしています。
 色川さんを在宅介護するうちに、他人では「死亡届を出すこともできない」「万一の時の入院や手術の同意書にサインすることもできない」などの「家族主義の日本の法律」の壁にぶつかったそうで、色川さんとの養子縁組か婚姻かを考え始めたとのこと。
 養子縁組では年少者の上野さんが色川姓になる必要があるため、婚姻を選んで色川さんが上野姓になったと説明し、「その名前の死亡届を見るたびに、憮然とする。選択的夫婦別姓制度が導入されていれば、こんな思いをしなくてもよかっただろう」「日本の法律が家族主義でなければ、こんな思いをすることもなかった」と書いています。書かれていることだけを踏まえると、上野氏は色川さんの死亡届提出のためだけに婚姻届を出したということでしょうか。
 実際には、上野氏が色川姓になっていたとしても、色川さんが亡くなった後に「復氏届」を提出すれば上野姓に戻れるそうですが、「当時は無知だった」とのこと。また財産相続には触れられていないので、気になる点はあるものの、“結婚制度・家族主義への異議”という主張は、「15時間の花嫁」を経ても一貫していました。
 そもそも、上野氏の著書タイトルにある「おひとりさま」は独身のイメージが強いですが、『おひとりさまの老後』は「結婚してもしなくても、みんな最後はひとりになる」という一文から始まっていました。今回の寄稿記事で、おひとりさま=独身ではないことをあらためて認識するとともに、上野氏ほどの社会学者にも知られていないマイナーな制度「復氏届」の存在がわかり、勉強になりました。
 とにかく結婚・離婚には、第三者の想像を絶する面倒くささが夫婦の数だけあるようだ……と思わされた今号でした。
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