中学受験の大手塾に憤慨! 算数の成績下落、「先生が無理」という娘の主張はわがままなのか?

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 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
 中学受験は、難関校になればなるほど試験の難易度が高く 、出題範囲も非常に広い。それゆえ、受験生は専門塾に通うのが一般的だ。
 もちろん、子どもが喜んで塾に通っているのであれば、親としては 万々歳なのだが、子どもによっては塾通いが苦痛でしかないケースもある。「勉強が嫌い」「成績が上がらない」「友人関係がうまくいかない」など、その理由はさまざまで、意外と「塾の先生との相性が悪い」という事例も多い。
 現在、中学1年生の娘・桃花さん(仮名)を持つ詩織さん(仮名)も、この問題で苦労した経験者だ。
 桃花さんは小3から大手塾に入り、難関校T学園を目指して頑張っていたという。その甲斐あって、小5春のクラス替えでは、念願の最上位クラスに。桃花さんは、この結果をすごく喜び、「クラス落ちしないように、勉強、頑張る!」と、より一層、身を入れて勉強するようになったそうだ。
 ところが、クラスアップしたその月から、算数の成績だけが、ズルズルと下がっていったという。
「それまでは、算数も決して苦手ではなかったと思います。けれど、下のクラスにいた時よりも偏差値が下がっていくので、『最上位クラスの算数にはついていけないのかな?』と心配していました」
 そこで詩織さんは、桃花さんに「算数の成績が下がってるけど、何か 心当たりはある?」と聞いてみたそうだ。すると桃花さんが「算数のA先生が 無理!」と言うので驚いたという。
 桃花さんの言う「A先生が無理な理由」はこれだった。
・お気に入りの女の子の名前だけを呼び捨てにする
・上から目線で常に偉そう
・自分勝手で生徒の話を聞かない
「最上位クラスの講師は、下のクラスとは違う先生方でした。最上位クラスは優秀なやり手の先生で固められていると聞いていたので、期待感があっただけに、すごくショックでしたね。桃花は『A先生が教えるなら、もう算数の授業は受けない!』とまで言い出す始末で……。私としてはやっぱり、最上位クラスにいてほしいという欲目があったので、『出会う人すべてが『いい人』とは限らない、中には『苦手』と感じる人もいるよ。 それにA先生とは受験終了までのお付き合いなんだから、やり過ごせば? なんたって、最上位クラスを受け持っている優秀な先生なんでしょ?』と説得したんですが、桃花には『ママって、そんな人だったんだ……』と軽蔑されてしまって。どうしたものか……と悩んでいました」

 しかし、桃花さんによくよく授業の様子を聞いてみたところ、以下のような状態だということもわかってきたという。
・解説もなく、いきなり問題ばかり解かせる
・授業中の質問を受け付けずに一方的に講義する
・黒板の文字を写し終えていないのに、すごいスピードで消してしまうが、自分の流儀だと言ってあらためない
「桃花がA先生を毛嫌いしている理由が、『なんとなく生理的に無理』というだけなら、室長に抗議にはいかなかったと思うんです。でも、もし講義方法が桃花の言っている通りならば、桃花の成績は上がらない。『算数が入試のカギ 』といわれるT学園が、このままでは高嶺の花になってしまう! と焦りました」
 詩織さんは、室長にアポを取り、面談してもらうことに。ところが、面談結果は芳しいものではなかったという。
「最初、『こういうわけなので、算数だけ、下のクラスでいいので受講できないか?』と聞いたんです。でも、答えは『NO』でした。それで、思いきって『だったら4科とも、元のクラスにしてもらえないか?』と言ったんですが、『それだとT学園には届きませんよ。それでいいんですか?』と言われ、最後に『私は、A先生は人気のある良い先生だと思いますけどね』と。まるで、桃花のわがままだと言わんばかりの口ぶりだったので憤慨しました」
 詩織さんが桃花さんに転塾を勧めても、「仲良しの友達ができたから、今さら、出たくない」と首を縦に振らず。なにより「A先生の算数は受けない!」という桃花さんの決意は固く、算数のみ自主休講し、ウェブ講座で自宅学習をしていたという。
 しかし、時は5年生の秋。新単元が目白押しの大事な時期ゆえに、融通が利かない塾にも、頑なな娘の態度にも、詩織さんのイライラは募るばかりだったそうだ。
「夫は海外に単身赴任をしているので、なかなか相談とかもできなかったんです。でも、夏休みに一時帰国をした際、夫が桃花に言ったんです。『根性あるな!』って。『嫌なことは嫌! って言えるのは、すごくいいことだ。日本人にはそれが足らない! ってパパはいつも思っている』って。そして、『別にA先生でなくても、T学園に合格すればいいんだろ? パパと一緒に勉強しないか?』と提案したんです。桃花も最初は乗り気だったんですが、すぐに思惑は外れました。やはり“父親塾”はうまくいくはずもなく、あえなく決裂です(笑)」

 そうこうしているうちに、新6年生になる時期が間近に迫った。その頃、ようやく予約していたプロ家庭教師の枠が空いたため、算数をお任せすることができたそうだ。
「地獄に仏でしたね……。さすがプロだけあって、教え上手で、褒め上手で、乗せ上手。桃花に『自習だけで、こんなに理解できているのはすごい!』と言って、自信を付けてくださって、理解が及んでいない部分とT学園対策を並行してやってくださったんです。わずか1年の間に、桃花は『算数、大好き!』というくらい成績が伸びました。まあ、お金は余分にかかりましたが、結果オーライです」
 こうして、桃花さんは初志貫徹で、無事にT学園に合格。
「りんこさん、私、学んだんです。人間関係には相性があります。私たちの世代は、どんなに嫌でも、目上の相手に対しては、我慢しながら、折り合いをつけて付き合っていく のが正しいとされてきました。でも、どうしても嫌ならば、人でもなんでも、その我慢は必要とは言えません。もちろん、我慢を放棄した分、より一層の努力は必要でしょうが、嫌なことを跳ねのけるパワーを見せてくれた桃花のことは、ちょっと見直しました」
 そんな誇らし気な詩織さんだが、最近、彼女にも変化があったという。
「私、転職したんです。実は、長年、理不尽な上司に振り回されてメンタルをやられそうになっていたんですが、この年齢では転職は無理だと思って、ずっと我慢していました。でも、それって美談でもなんでもないなって思って、辞めました。それで一念発起して、資格を取得し、先日、無事希望の職場に採用されたんです!」
 「今、私が楽しい毎日が送れているのも、桃花の決断を見守った 経験があったからですよね」と笑う詩織さん。その表情はとても明るいものだった。
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